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一人会社の経理塾~知っておくべき決算書知識~

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近年のAI技術の進化に伴い、自動仕訳機能を持つ会計ソフトが登場し、経理業務が大きく効率化されつつあります。
しかし、このAI時代において、単にツールを使用するだけでなく、その背後にある基本的な知識や理解を持つことが、業務効率性獲得と適切な経営判断を下すための鍵となります。

そしてその中核をなすのが、「決算書理解」と言えます。

この記事では、一人会社や個人事業主向けに、決算書(P/LとB/S)の基本からその重要性、そして具体的な読み解き方を解説します。

また、確定申告をはじめとする経理実務の効率化を追求する上で、冗長な勘定項目を削減し、必要最低限の情報を示す「コンパクトな決算書」の作成方法についても触れます。
このノウハウを身につけることで、経理業務の省エネ化はもちろん、その後の確定申告書作成業務の効率化も実現できるでしょう。

それでは、お付き合いください。

目次

はじめに

【一人会社の経理塾】のうち、《知っておくべき決算書知識》編を送ります。

【目次(一人会社の経理塾)】
(1)一人会社の経理塾とは?
一人会社の経理塾~導入編~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)
(2)個人事業主?法人?事業形態の選択
一人会社の経理塾~個人事業主?法人?事業形態の選択~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)
(3)知っておくべき決算書知識(当記事)
(4)年間経理スケジュール
一人会社の経理塾~知っておくべき経理スケジュール~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)
(5)知っておくべき経理知識
一人会社の経理塾~知っておくべき経理知識~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)
(6)決算・節税対策
一人会社の経理塾~決算・節税対策~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)
(7)税理士選定ガイド
一人会社の経理塾~税理士選定ガイド~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)

決算書の全体像

一人会社経営では、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)を理解できれば十分

日々の経理業務で日常取引の仕訳を行い、総勘定元帳や試算表を通じ、最終的に一年間の業績や財産の状況を、「決算書」に集約します。

「決算書」については、「計算書類」、「財務諸表」、「財務三表」、などの言葉が一般的に使われることが多いですが、それらの言葉が意味する書類関係について以下でまず説明します。

計算書類とは?

会社法に規定する「決算書」を、正確には「計算書類」と呼びます。以下4つの書類の総称です。
これは、上場・非上場問わず、会社法の対象になる企業の決算書を指します。

【計算書類とは?】
①貸借対照表(B/S)
②損益計算書(P/L)
③株主資本等変動計算書(S/S)※1
④個別注記表
※1:Statements of Shareholders’ Equity の略称

【株主資本等変動計算書(S/S)とは?】
・株主資本等変動計算書(S/S)とは、期首から期末にかけての、貸借対照表(B/S)における純資産の変動事由を示すための書類
・このように、貸借対照表(B/S)の内容を補足する書類である

株主資本等変動計算書(S/S)のイメージ

中小企業庁「中小企業の会計ツール集」より抜粋

財務諸表とは?

また、「財務諸表」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。「財務諸表」も「決算書」と呼ばれることがありますが、これは、金融証券取引法の対象(主に、上場企業)になる企業の決算書を指します。
そして、「財務諸表」とは、以下の5つの書類の総称です。

【財務諸表とは?】
①貸借対照表(B/S)
②損益計算書(P/L)
③株主資本等変動計算書(S/S)
④キャッシュフロー計算書(C/F)
⑤附属明細表

キャッシュフロー計算書(C/F)のイメージ

【キャッシュフロ計算書(C/F)とは?】
・キャッシュフロー計算書とは、期首から期末にかけて、現預金(キャッシュ)どのように出入りしたのか、期末時点の現預金残高はいくらかを計算するための書類

中小企業庁「中小企業の会計ツール集」より抜粋

財務三表とは?

また、「財務三表」という言葉を聞いたことのある方も多いでしょう。「財務三表」とは、以下の3つの書類の総称です。

【財務三表とは?】
①貸借対照表(B/S)
②損益計算書(P/L)
③キャッシュフロー計算書(C/F)

まとめ

「計算書類」、「財務諸表」、「財務三表」、で範疇となる書類の範囲について以下にまとめました。
一人会社経営ではこのうち、貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)さえ理解できていれば十分です。その他書類の理解は、ざっとでOKです。

各書類の関係性

ご参考までに、貸借対照表(B/S)と、キャッシュフロー計算書(C/F)及び株主資本等変動計算書(S/S)の関連イメージを以下に記載します。

キャッシュフロー計算書(C/F)と株主資本等変動計算書(S/S)は共に、貸借対照表(B/S)の内容を補足する書類

以下のセクションでは、特に損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の基本的な内容とその意義を解説します。
一人会社や個人事業主であっても、これらの決算書のエッセンスを正しく理解し、適切に活用することが重要です。

損益計算書(P/L)について

損益計算書(P/L)とは、1年間の企業の経営成績を示すレポート

P/Lとは、Profit&Loss Statementの略称で、1年間の企業の収益と費用(=経営成績)を示す経営レポートです。
売上高から様々な費用を引いた結果としての利益や損失が計算されます。
P/Lを読解することで、事業の収益性やどの部分でコストがかかっているのかなどを把握することができます。

P/Lの体系(全体像)

まずは、P/Lの体系を理解することが重要です。
以下のP/L主要項目の内容と共に、この体系図は暗記するまで必ず押さえておきましょう。

損益計算書(P/L)体系図

P/Lの主要指標

以下の通り、P/Lの主要指標の位置づけを理解しておきましょう。

1. 売上総利益(粗利益)
売上総利益(粗利益)は、売上高から直接的な費用、すなわち売上原価を引いたものです。
売上原価とは、商品を販売するためにかかった直接的なコスト、例えば材料費などを指します。

2. 営業利益
営業利益は、売上総利益(粗利益)から営業活動に関連する費用(営業費用)を引いたものです。
厳密には「販売費(広告宣伝費など商品の販売活動にかかる費用)」と「一般管理費(家賃など販売とは直接関連のない一般管理業務にかかる費用)」に分かれますが、実務上は両者を区分して理解する必要はありません。企業の本業の収益力を評価する際の指標となります。

3. 経常利益
経常利益は、営業利益に営業外収益と営業外費用を加減したものです。
営業外収益とは、投資活動や金融活動からの収益など、主要な事業活動以外からの収益を指します(例:受取利息)。一方、営業外費用は、それらの活動からの費用(例:支払利息)を指します。
経常利益は、企業の本業以外も含む通常の業務活動を通じて得た利益指標です。

4. 税引前当期純利益
税引前当期純利益は、経常利益から特別利益や特別損失を加減したものです。
特別利益や特別損失が発生する事例は少ないことから、経常利益と税引前当期純利益が同額となることも多いです。

5. 税引後当期純利益
税引後当期純利益は、税引前当期純利益から税金(法人税、住民税、事業税など)を引いた後の純利益を指します。つまり、実際に企業が1年間で得た、税金を差し引いた純粋な利益の額となります。

P/Lに係る仕訳

以下の記事を参考にしてください。
基本的には同じ仕訳が繰り返し行われることが多いため、分からない仕訳があれば個別にインターネット上で調べましょう。

内部リンク

貸借対照表(B/S)について

貸借対照表(B/S)とは、会計年度末における企業の財務状況を示すレポート

B/Sとは、Balance Sheetの略称。年度末での企業の資産、負債、および所有者の資本状態を示す財務レポートです。
B/Sを読解することで、事業の財務健全性や資金繰りの状態を明らかにすることができます。

B/Sの体系(全体像)

まずは、B/Sの体系を理解が重要です。
以下のB/S主要項目の内容と共に、この体系図は暗記するまで必ず押さえておきましょう。

貸借対照表(B/S)体系図

B/Sの主要指標

以下の通り、B/Sの主要指標の位置づけを理解しておきましょう。

1.資産
資産は、企業が所有する経済的な資源や価値を表します。以下の3つの項目に区分されます。
<資産内訳>
① 流動資産

流動資産とは、1年以内に現金化される見込みのある資産を指します。
例えば、現金、預金、売掛金、棚卸資産、短期貸付金などが該当します。
② 固定資産
固定資産は、1年以上継続して使用される資産で、事業活動基盤として長期間利用されるものを指します。
大きく、「有形固定資産」、「無形固定資産」、「投資その他の資産」に区分されます。
例えば、各々、以下のような項目が該当します。
・「有形固定資産」:土地、建物、機械、車両 など
・「無形固定資産」:ソフトウェア、商標権 など
・「投資その他の資産」:投資有価証券、関係会社株式、長期貸付金 など
③ 繰延資産
繰延資産は、既に支払いが済んでいる支出のうち、支出の効果が翌期以降も続くものを指します。
例えば、創立費や開業費などが該当します。

2. 負債
負債は、企業が将来支払う義務や債務を表すものです。以下の2つの項目に区分されます。
<負債内訳>
① 流動負債
流動負債は、1年以内に支払う必要がある債務を指します。
例えば、買掛金、短期借入金、未払金などが該当します。
② 固定負債
固定負債は、1年以上の長期間で返済する必要がある債務を指します。
例えば、長期借入金などが該当します。

3. 純資産
純資産は、企業の純粋な価値を示すものです。
資産から負債を引いたものとして表され、以下の3つで構成されます。
<純資産内訳>
① 資本金
資本金は、会社設立時及びその後の増資時に株主が出資した資金を指します。
② 資本剰余金
資本剰余金は、出資金の一部を資本金ではなく資本剰余金へ計上した場合などで生じます。
③ 利益剰余金
利益剰余金は、過去の利益から配当などを差し引いた後の累積された利益部分を指します。
通常、株主への配当原資はここから使用されます。

B/Sに係る仕訳

以下の記事を参考にしてください。
基本的には同じ仕訳が繰り返し行われることが多いため、分からない仕訳があれば個別にインターネット上で調べましょう。

内部リンク

損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の関係性

一年間で稼いだP/Lの税引後当期純利益は、B/Sの繰越利益剰余金へ計上される。

配当などが無ければ通常、P/Lの税引後当期純利益の累積がB/Sの繰越利益剰余金の金額となります。
すなわち、当期純利益が計上されるほど、B/Sの純資産が厚くなり財務的に健全なB/Sへ繋がることとなります。

P/LとB/Sの関連性

決算書勘定科目のコンパクト化

決算書の簡素化を通じて、経理効率向上やビジネスの透明性を高めることができる。

事業を始める際に効率的な事業運営を行うことは多くの経営者にとっての共通の目標であり、特に一人会社や個人事業主の場合、このテーマの重要性は増してきます。
この点を経理業務に置き換えると、いかに決算書をコンパクトにまとめ上げるかが、直接的な時間の節約や業務負荷の軽減に繋がります。すなわち、決算書をシンプルに保つことは、確定申告時の業務の省エネ化や、ビジネスの透明性を高める効果があるのです。
特に、株式投資や不動産投資会社のようなケースを除き、B/S(貸借対照表)の簡素化/圧縮は、少額資本で事業を行うことや、在庫の最小化といったアプローチを実現することができ、これは起業リスクを低減する効果も有します。

以下、コンサルティング事業など、多くの資産を持たずシンプルな事業内容とした場合の決算書となります。
標準ケースに比べて決算書勘定科目を削減でき、経理業務の効率化に貢献できます。

例えば、上記P/L「②シンプルケース」では、在庫を保有しない、無借金経営、特別損益項目が生じないケースを想定しました。一人会社ではこのようなケースも多く、上記の通り、シンプルなP/Lに仕上げることができます。
このケースでは、販管費項目の集計が経理業務の大半を占めますので、自動仕訳機能を使うことで、経理業務を効率化できます。

また、例えば、上記B/S「③シンプルケース」では、固定資産や在庫を持たず、無借金経営で、繰延資産も償却済(費用計上済)のケースを想定しました。一人会社ではこのようなケースも多く、上記の通り、シンプルなB/Sに仕上げることができます。

おわりに

一人会社や個人事業主が直面する経営課題は多岐にわたりますが、決算書の理解とその効果的な管理は、事業の健全性を維持し、成長を目指す上での不可欠な要素と言えるでしょう。

本記事を通じて、決算書の基本やそのコンパクト化の意義、そして効率的な管理方法についての知見を深めることができたかと思います。

特に、一人会社や個人事業主が不確実な時代を生きる上では、決算書を通じて事業の実態を明らかにし継続的にモニタリングを行いながら、自身が強みとする領域へ経営リソースを最適化することが重要です。

経営は常に変化とともにあり、新しい課題や機会が次々と現れますが、基本を理解し、それを土台にして戦略的に取組むことで、多くのハードルを乗り越える力となることでしょう。

創業Meister

当記事に関するお問い合わせなどは、以下よりお願いいたします。

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