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一人会社の経理塾~個人事業主?法人?事業形態の選択~

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起業する際、自身のビジネスをどのような形態で運営するかは、非常に重要な選択となります。
これは、ビジネス戦略、経済的リスク、そして税金の取扱いに直結する事象であり、適切な知識と計画が必要となります。

おそらく、これからビジネスを始める多くの方々、あるいはすでに事業を運営しているが法人化を検討されている方々にとって、個人事業主と法人(株式会社、合同会社)の具体的な違いやメリット、デメリットが明確でないことが往々にしてあります

当記事では、「法人」「会社」など言葉の位置づけの理解と共に、多くの潜在起業家が抱える、「個人事業主と法人?」、「株式会社?合同会社?」、「事業化に際してどの形態を選ぶべきか?」といったテーマにスポットを当て、疑問や課題に対して、解説していきます。

最後までお読みいただき、あなたのビジネススタートアップに役立てていただければ幸いです。

目次

はじめに

【一人会社の経理塾】のうち、《個人事業主?法人?事業形態の選択》編を送ります。

【目次(一人会社の経理塾)】
(1)一人会社の経理塾とは?
一人会社の経理塾~導入編~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)
(2)個人事業主?法人?事業形態の選択(当記事)
(3)知っておくべき決算書知識
一人会社の経理塾~知っておくべき決算書知識~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)
(4)年間経理スケジュール
(5)知っておくべき経理知識
一人会社の経理塾~知っておくべき経理知識~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)
(6)決算対策
(7)税理士選定ガイド
一人会社の経理塾~税理士選定ガイド~ | 一人会社の起業塾 (mielu-ca.com)

企業とは?法人とは?組織形態の全体像

企業形態を選択する際に、「企業」、「会社」、「法人」、「個人事業主」などといった言葉が氾濫していることに気づきます。

まずは、それぞれの組織形態の全体像と、実務上選択されることの多いケースを理解しておきましょう。

組織形態の全体像の理解

「企業」、「会社」、「法人」、「個人事業主」などのキーワードや概念がどのように関連し合っているのかを理解することは、これから事業を開始する際の出発点となります。

これらの言葉や概念の関連性や違いを以下の通りわかりやすく表現しましたので、それぞれの組織形態の位置関係を把握してください。

組織形態の位置づけ

実務上想定される3つの事業形態

新たに起業を行う上では、「個人事業主」、「株式会社」、「合同会社」の形態で事業を開始するケースが多い

組織の位置づけ

新たに起業する際、実務において主に選択されるオプションは、大きく分けて「個人事業主」、「株式会社」、そして「合同会社」の3つであることが多いです。

それぞれの選択肢は、その特性から異なる利点や課題をもたらし、一人社長のニーズやビジネスモデルによって最適な選択肢が変わってきます。

個人事業主:シンプルで手軽なスタート
個人事業主は、設立にかかるコストや手続きが比較的シンプルであるため、小規模でスタートするビジネスや個人の専門職、フリーランサーに選ばれることが多いです。この形態では、事業主個人が全ての責任を負うため、利益も全て事業主のものとなりますが、同時にリスクも全て個人が背負うことになります。

株式会社:信頼性と拡張性を備えたビジネス形態
一方で、株式会社は法人格を持つため、事業と個人を分離でき、ビジネスが拡大するにつれて資金調達のオプションも増えてきます。また、外部との取引においても、「株式会社」の名のもとに行動することで、ビジネスパートナーや顧客からの信頼を得やすくなる側面もあります。

合同会社:パートナーシップを軸にした運営
最後に、合同会社は、株式会社と同様に法人格を持つため、事業と個人を分離できます。また、合同会社はメンバー間の責任や利益の配分が比較的自由であるため、パートナーシップを基盤としたビジネスモデルを構築するのに適しています。

組織形態の選択順序

新しい事業を始めるにあたり、その形態を選定することは非常に重要なステップとなります。
この決定は、経理処理、税金の取扱い、法的責任など、ビジネス運営の多くの面で影響を与えます。
前述の通り、実務上、多くの新規事業では主に「個人事業主」、「株式会社」、「合同会社」のいずれかの形態でスタートします。この選択をスムーズに進めるためには、次の2つのステップを踏むことが一般的です。

事業形態選択ステップ

ステップ1:「個人事業主」か「法人」かを選択
最初の分岐点では、自身のビジネスが「個人事業主」として運営するのか、あるいは「法人」として設立するのかを判断します。それぞれの選択は、以下の特徴や要因に影響を受けます。

個人事業主
事業開始に伴う手続きの簡素さと運営コストの低さが魅力ですが、個人が全ての法的リスクを担う形となります。
法人
法的なリスクから個人の資産を守るとともに、企業としての信頼性や外部からの資金調達の選択肢が広がります。

ステップ2:「株式会社」か「合同会社」かを選択
「法人」を選択した場合の次のステップでは、「株式会社」か「合同会社」かを選びます。
それぞれの形態には、異なる特性や適しているビジネスモデルがあります。

株式会社
資金調達の面で多くの選択肢を持ち、株式を公開することも視野に入れることができますが、一般的に、株式会社の設立コストは、約20万円 + 諸経費(印鑑製作費用や専門家代行手数料等)と高額になります。
合同会社
合同会社の会社設立コストは、6万円 + 諸経費(印鑑製作費用や専門家代行手数料等)と比較的少ない初期費用で設立することができますが、株式会社と比べて投資家からの資金調達が難しくなる可能性があります。

選択するビジネス形態は、事業計画、将来像、そしてリスク許容度などに依存します。
各形態の特徴をしっかり理解し、経営スタイルやビジネスの方向性、ニーズに最も適合する契約形態を選ぶことが、円滑な業務進行の鍵となります。

個人事業主と法人のメリット/デメリット

それではまず、「個人事業主」と「法人」をどのように選択したらよいのでしょうか?
以下に、個人事業と会社(法人)形態の項目別のメリット/デメリットを比較表にしてみました。
このような観点も考慮し、ご自身に相応しい事業形態を選択しましょう。

事業形態別の比較表

税金の観点

特に税金の観点から事業形態を検討してみたいという方は、以下を参考としてください。

・所得税率は5%~45%までの累進課税である一方、法人税率は一定。
・そして、所得税率が法人税率と同程度になる所得レンジは通常、「約700万円~800万円」であり、それ以上になると、所得税率が法人税率を上回る。

個人事業主の所得税率は5%から45%と、所得に応じた累進課税となっています。一方で、法人の法人税率は一定で、約23.2%又は15%(※1)とされています。
これらの数字から見えてくるのは、一定の利益を上げると税率が個人事業主の方が高くなるという事実です。
(※1)普通法人の法人税率は23.2%。ただし、資本金1億円以下の法人の場合、年800万円以下の部分に係る法人税率は、通常は15%となる。

実際の数字でみてみると、所得税率が法人税率と同程度になる所得(利益)レンジは、約700万円~800万円とされています(注意:売上(年商)ではないため、留意)。この所得(利益)水準を基準点として考え、このレンジを超えると個人事業主としての税負担が増えてきます。したがって、この利益水準は、事業形態を選ぶうえでの一つの重要なマイルストーンとなるでしょう。

どうしても迷った場合のポイント

本業に集中し事業を大きくしたい、経理など経営業務をアウトソースするコスト負担に抵抗感のない方は、法人(会社)形態を選択するのが無難

上記の通り、いくつかの視点で個人事業主と法人の選択メリット/デメリットを説明しましたが、ポイントが多すぎて迷ってしまう方も多いかもしれません。そのような方は、以下を主なポイントとして選択をするとよいでしょう。

本業への集中
一人会社であっても、起業初期から事業を大きくしたいというビジョンがあり本業に集中したい方は、会社設立コストや税理士起用コストなどを考慮しても法人形態の方がメリットが大きいことが多いです。

ブランディングや信頼性
法人形態は、ビジネスパートナーやお客様に対して一定の信頼感や安定感をもたらすことがあります。
特にBtoBのビジネスモデルをお持ちの場合、法人としての取引がスムーズに進むケースが多いです。

株式会社 or 合同会社

会社設立の金銭的ハードル(株式会社は合同会社に比べ、会社設立コストが15万円程高い)に支障がない場合には、一般的には「株式会社」形態を選択する方が無難。

次に、法人の中で、「株式会社」と「合同会社」のいずれを選択するとよいでしょうか?

まずは、株式会社と合同会社とは何かについて、以下で説明します。

① 株式会社
・株式を発行して資金を集めて設立される会社形態。 出資額を上限とする有限責任を負う出資者(株主)と、実際に会社を経営する経営者(取締役)が分離しており、取締役は株主総会で選定される(有限責任)。
・ただし、一人会社の場合には、出資者と経営者は一体であることが多い。
② 合同会社
・有限責任社員のみで構成される会社形態。
・会社が債務を完済できなかった場合でも、合同会社の社員が債権者に対して弁済する義務を負わない(有限責任)。
③ 合名会社
・会社の債務を弁済する責任を直接に、かつ、無制限に負うことになる、無限責任社員のみで構成される会社形態。
・会社が債務を完済できなかった場合、構成員の個人資産も弁済にあてなければならない可能性がある(無限責任)。
・実務において活用されるケースは少ない。
④ 合資会社
・無限責任社員と責任が一定額に限定される有限責任社員とで構成される会社形態。
・会社が債務を完済できなかった場合、無限責任社員の個人資産も弁済にあてなければならない可能性がある。
・ただし、有限責任社員は一定額を上限とする弁済責任を負う。
・実務において活用されるケースは少ない。

また、新設会社に占める株式会社の割合は以下の通りです。
会社形態として、「株式会社」が選択されるケースが多いのがわかりますが、近年は「合同会社」が選択されるケースも増えています

会社設立形態のシェア

株式会社と合同会社のメリット/デメリット

株式会社と合同会社の一般的なメリットとデメリットを以下で比較していますので確認ください。

スクロールできます
会社形態メリットデメリット
株式会社最も一般的な会社形態であり、信用力が相対的に高い。
株式を発行することで第三者からの資金調達が比較的容易に行える等、将来の事業拡張可能性を有する。
第三者へ株式譲渡することで事業継続の選択肢が広がる。
登録免許税等設立コストが相対的に高い。
取締役会や株主総会等といった法令で規定される手続が相対的に多く、管理コストが相対的に高い。
合同会社株式会社同様有限責任であるため、リスクを抑えることができる。
株式会社に比べ、設立コストや管理コストが相対的に低い。
法令で規定される手続が相対的に少ないため、自由度の高い運営を行うことができる。
相対的に信用力が低い。
株式会社と比較して、閉鎖的な会社形態になるため、資金調達や譲渡性面で劣る。(将来的に上場を目指している場合には株式会社での設立を推奨)
株式会社と合同会社のメリット・デメリット

おわりに

起業をし、ビジネスを展開していく道のりには、多くの選択と決断が必要です。
そして、その中でも初期に登場する重要な選択の一つが、「組織形態の選択」です。

組織形態は、その後のビジネスの進行や、いかに業務を運営していくかに大きな影響をもたらします。

個人事業主と法人、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解し、自身のビジネスプランや将来のビジョンに照らし合わせて、最良の選択をすることが重要です。

最後に、どの組織形態を選ぶにしても、その形態があなたのビジネスに寄り添い、ビジネスが拡大成長していく力となることを心より願っています。

創業Meister

当記事に関するお問い合わせなどは、以下よりお願いいたします。

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「会社設立」に関する基礎情報を理解したい方は、
以下の記事を参考にしてください。

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