補助金とは?補助金と助成金の違いは?
一般的に、「補助金」とは、国(経済産業省など)や地方公共団体が特定の事業を推進するための経費の一部を補助する制度のことを指し、税金が財源となります。新規事業の立ち上げや既存事業の拡大、改善、そしてイノベーション推進など様々な目的で提供されており、特に中小企業者や起業家に対する支援として活用されます。
具体的には、研究開発費、設備投資費、広告宣伝費、海外展開に伴う費用など、多岐に渡る事業経費が対象となり得ます。また、補助金は基本的に「後払い」の形を取ることが多く、事業者が先に自己負担で事業を進め、その後、補助金の支払いを受けることが一般的です。そして、補助金はその名の通り「補助」なので、全額が補助されるわけではなく、一部の費用が補助されることが多いことを理解しておくことが重要です。
一方で、「助成金」とは何か、そして補助金との違いは何かというと、助成金は主に労働条件の改善や雇用の安定等、社会的な目的を達成するために提供される資金のことを指します。助成金は主に労働者の福利厚生の向上や雇用維持・増加を目的としたものが多く、雇用保険料が財源となります。具体的には、労働者の健康・安全の確保、スキルアップ教育、女性や高齢者、障がい者等の雇用促進などがその対象となります。
補助金と助成金の大きな違いは、補助金が「事業そのものの成長・発展」を支援するのに対して、助成金は「労働環境の改善や雇用の促進」等、社会的な課題解決を目的としている点です。
それぞれ、申請条件や対象となる費用、提出書類などが異なるため、自社のニーズに合った制度を選択し、適切に活用することが求められます。
補助金活用のメリット
補助金活用のメリットは様々ですが、以下の3つを紹介したいと思います。
●将来投資
●信頼性の向上
●事業計画の可視化/精緻化
将来投資
企業は一般的に「導入⇒成長⇒成熟⇒衰退」というライフサイクルを辿ります。
特に現代の変化の激しいの経済環境では、企業が「成長期」や「安定期」にある時こそ、次のステージへの投資が求められ、補助金はその際の大きな支援となり得ます。
例えば、成長期における将来投資により成長期フェーズを伸長ことができますし、成熟期における投資により第二創業を実現することもできます。
このように、自己資金負担を軽減し、リスクを抑えながら、新たな事業展開や設備投資などの重要な投資に取組むことにより、経営者自身の投資モチベーションも高まり、企業の将来への投資促進が進むでしょう。
信頼性の向上
補助金の獲得は企業の信頼性や信用性の向上にも寄与します。
公的な資金援助を受けていることは、外部ステークホルダーに対して強い信頼性と信用性を示す証となります。
これは、顧客や取引先、金融機関、そして投資家等に対してポジティブな影響を及ぼします。公的な支援を受けることで、企業のビジネスモデルや事業計画が評価されているという事実は、企業の社会的信用を大いに高めるでしょう。
事業計画の可視化/精緻化
補助金を受けるためには通常は審査が行われ、審査における提出書類として詳細な事業計画書の作成が求められます。
事業計画の作成及び精緻化のプロセスは、経営者の頭の中にあるビジョンを具体的な形で表現し、その上で様々なステークホルダーに対してその計画を共有し、フィードバックを得る絶好の機会となります。
さらに、事業計画書の作成は、収益性や財務状況、市場環境などの各要素を詳細に検討し、その実現可能性を確認する重要なステップともなります。このようなステップを辿ることで、経営者の考える新事業が市場ニーズがあるものなのか、より事業の成功可能性を高めるために何をすべきなのかなどがより具体化されます。
代表的な国の補助金制度
補助金の種類は多岐にわたり、それぞれの企業のニーズに応じた様々な制度が存在します。ここでは、昨今特に利用可能性が高い4つの代表的な補助金制度について詳しく見ていきます。
●小規模事業者持続化補助金
●IT導入補助金
●ものづくり補助金
●事業再構築補助金
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者自らが作成した持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組み(例:新たな市場への参入に向けた売り方の工夫や新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・開発等)や、地道な販路開拓等と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。
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IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として、業務効率化やDX等に向けた ITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。
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ものづくり補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更(働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入等)等に対応するため、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するものです。
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事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化し、当面の需要や売上の回復が期待し難い中、ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業・業種転換、事業再編、国内回帰又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。
また、物価高騰により依然として業況が厳しい事業者への支援や、成長分野への事業再構築を支援する制度も新設されており、ポストコロナ社会を見据えた未来社会を切り拓くための取組を重点的に支援しているものです。
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補助金活用時の留意事項
補助金活用時の留意事項を以下3点紹介します。
●後払いの性質
●課税対象
●適切な事務処理
後払いの性質
大多数の補助金は、後払い制となっています。例えば、総額300万円の事業で2/3の補助がある場合は、まず自社資金(自己資金や借入など)で300万円を支出する必要があり、200万円は事業期間終了後の受給となります。
よって、補助金受給前に事業資金を全て用意しなければならない点に留意が必要です。
課税対象
通常、事業主が法人の場合は法人税、個人事業主の場合は所得税の課税対象となります。
適切な事務処理
事業実施期間終了後、一定期間内に実施報告書や支払関連証憑等を提出する必要がありますが、マニュアルに沿った提出書類が不十分の場合、支払が拒否されることがあるため留意が必要です。
よって、定められた事業実施期間以外に支出した経費や、十分な証憑が揃っていない支出については補助金対象の経費として認められないため、留意が必要です。
補助金シミュレーション
一年間の事業活動で手許に残る現預金は、思っているよりも少ないものです。
なぜならば、売上を得るためには、仕入代金、人件費や賃料などの様々な経費が必要となり、得られた利益の一部は税金として支払われるからです。この仕組みを知ることは、補助金の重要性を理解するための一つの視点となります。
それでは、具体的な補助金活用のシミュレーション事例をご覧ください。今回は、ものづくり補助金を例に取ります。
※数値はあくまで情報をシンプルに分かりやすくした上での参考値であり、正確性を期すものではない点はご理解ください。
中小企業白書(2021年)に記載のある、平均的な財務数値をもとにすると、小規模企業の平均売上高は約6,800万円です。そのうち、人件費や原材料費などに約6,600万円、そして、会社の税引前利益に対して法人税等が課され、手元に残る額は約100万円となります。
一方、第13回申請時までのものづくり補助金の平均受給額は約800万円となっています。
すなわち、平均的な金額でものづくり補助金を受給(約800万円)することで、8年分の事業で得られる資金(100万円×8年)を獲得することができるのです。
この事実は、事業を通じて利益を獲得し適切に納税を行っている事業者だからこそ理解できる価値でもあり、特に成長期や事業拡大期にある企業にとっては、補助金の活用は大きな強みとなることでしょう。
まとめ
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