「開業時の社会保険関連手続」のポイント
まずは、「開業時の社会保険関連手続」タスクの全体像をざっと理解したいです。
はい、分かりました。
「開業時の社会保険関連手続」タスクの全体的なポイントを、シンプルに以下の通りまとめましたので、理解しておきましょう。
A. 法人の場合
What? (何を) | 健康保険・厚生年金への加入(※1) |
When? (いつ) | 会社設立から5日以内 |
Who? (誰が) | 「事業主自ら実施(自製)」又は「社会保険労務士へ委託(外注)」 |
How? (方法) | 必要書類を準備の上、年金事務所の窓口等へ届出 |
How long? (期間) | 作業時間:3時間程 申請から加入までの期間:数日~数週間 |
How much? (費用) | 自製のケース:無料 外注のケース:数万円/月(社労士と顧問契約を締結する場合) |
(※1)役員報酬ゼロの場合を除き、一人会社の場合においても加入義務が発生(役員報酬ゼロの場合は、「B.個人事業主の場合」を参照)
B. 個人事業主の場合
What? (何を) | 国民健康保険・国民年金への加入(※1,2) |
When? (いつ) | 退職した日の翌日から14日以内 |
Who? (誰が) | 「事業主自ら実施(自製)」又は「社会保険労務士へ委託(外注)」 |
How? (方法) | 必要書類を準備の上、市区町村の窓口等へ届出 |
How long? (期間) | 作業時間:3時間程 申請から加入までの期間:数日~数週間 |
How much? (費用) | 自製のケース:無料 外注のケース:数万円/月(社労士と顧問契約を締結する場合) |
(※1)退職する会社で加入していた健康保険を任意で継続することも可能。資格喪失日から20日以内に申請すれば、最長2年間継続することができる。ただし、サラリーマン時代と異なり、会社が負担していた金額含め、保険料全額を支払う必要がある点に留意。
(※2)配偶者がサラリーマンである場合、配偶者の扶養に入ることも可能。この場合、保険料の支払いは不要。退職後5日以内に配偶者の会社を通して手続を行う必要がある点に留意。
「開業時の社会保険関連手続」タスク記事のまとめ
これから、 「開業時の社会保険関連手続」タスクに関する手続きなどを説明します。
結論をまずは知りたい方のために、記事内容を簡潔にまとめます。
よろしくお願いいたします。
- 事前理解
(1)社会保険とは?
・「社会保険」とは、医療保険、年金保険、労働保険、介護保険の総称。
・特に、医療保険と年金保険について、開業時に切替え手続が必要となる。
(2)一般的な社会保険の適用ケース
・法人のケース:健康保険/厚生年金
・個人事業主のケース:国民健康保険/国民年金
(3)負担金額
<1. 法人のケース(健康保険/厚生年金)>
・健康保険料及び厚生年金保険料共に、標準報酬月額に応じて異なる。
・算出された税額を企業と従業員で折半する形で各々負担する。
<2. 個人事業主のケース(国民健康保険/国民年金)>
・国民健康保険料は、前年の所得に応じて異なる。
・国民年金は、全員一律で月に17,000円程度を負担する。
(4)届出書類の種類
<1. 法人のケース>
a. 健康保険・厚生年金加入届出時:
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
b. 被保険者届出時:
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(役員、従業員等被保険者となる人全員分)
c. 被扶養者届出時 :
- 健康保険被扶養者(異動)届
<2. 個人事業主のケース>
a. 国民健康保険加入届出時:
- 国民健康保険適用開始届
- 社会保険資格喪失証明書(加入者全員が記載されているもの・組合印、社判等が押印されているもの)
b. 国民年金加入届出時:
- 国民年金被保険者関係届書(申出書)
(5)提出先及び提出期限
<1. 法人のケース>
・提出先:会社所在地を所轄する年金事務所
・提出期限:会社設立から5日以内
<2. 個人事業主のケース>
・提出先:居住地の市区町村役場
・提出期限:原則として退職後の14日以内 - 事前準備
・なし - 領域専門家
・社会保険労務士 - 利用サービス
・会社設立支援ITツール など - 作業手順
Step 1(適用される社会保険の整理)【1時間程】
(1)開業にあたり各自適用される社会保険制度の整理
Step 2(必要書類の準備)【30分程】
(1)利用サービスの選択
(2)必要書類の準備
Step 3(申請)【30分程】
(1)行政官庁の窓口又は電子申請にて申請の実施
なるほどです…
私はもう少し詳細に教えて欲しいので、解説をお願いします。
「開業時の社会保険関連手続」タスクの事前理解
起業・独立時に検討すべき社会保険制度とは?
そもそも、社会保険って何ですか?
社会保険は、医療保険、年金保険、労働保険、介護保険等の総称です。
詳しくは以下をご参考にしてください。
① 医療保険とは?
・「医療保険」は、病気やケガ等で医療機関による診察を受けた際の必要な給付が行われる保険。
・会社などに勤めている人が加入する「健康保険」、フリーランスや非正規雇用者、会社を退職した人などが加入する「国民健康保険」、75歳以上を全員対象とする「後期高齢者医療制度」で構成される。
② 年金保険とは?
・「年金保険(公的年金)」は、「国民年金」と「厚生年金」とで構成され、国民年金は階段の1階建て部分、そして厚生年金は2階建て部分に例えられることがある。
・「国民年金」は日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する必要がある(国民皆保険制度)。
・「厚生年金」は、会社などに勤務している人が国民年金に上乗せで加入するもの。
③ 労働保険とは?
・「労働保険」は、「雇用保険」と「労災保険」とで構成される。
・失業して所得がなくなった場合に、生活の安定や再就職促進を図るために必要な給付が行われるのが「雇用保険」であり、業務上の労働者の負傷・疾病・障害又は死亡に際して必要な給付が行なわれるのが「労災保険」。
④ 介護保険とは?
・「介護保険」は、要介護状態や要支援状態になった場合に必要な給付が行われる保険。
・40歳から加入することになる保険であり、40歳以上の医療保険加入者は、自動的に介護保険料納付がスタートする。
年金保険(公的年金)のイメージは、以下を参考にしてください。
労働保険に関しては、以下のアドバイスを参考にしてください。
・労働保険に関して、役員は一般的に労働保険の適用対象外のため、一人会社(法人)の代表者については、通常は適用対象外となる。
・また、個人事業主への労働保険の適用もない。
今回は、このうち主に「医療保険」と「年金保険」の2つについて、法人と個人事業主のケースとに分けて内容を説明します。
一般的な社会保険の適用ケース(独立時にも社会保険加入義務がある)
法人と個人事業主とで、適用される医療保険と年金保険の種類が異なります。一般的な対応を整理すると、以下の表の通りになります。
種類 | 医療保険 | 年金保険 | 窓口 |
---|---|---|---|
1. 法人 | 健康保険 | 厚生年金 | 年金事務所 |
2. 個人事業主 | 国民健康保険 | 国民年金 | 市区町村役場 |
「一般的」ということは例外もあるということですか?
その通りです。
それでは、例外ケースを少し解説しますね。
<1. 法人の場合における例外ケース>
① 役員報酬ゼロ、かつ、雇用者ゼロの場合
・個人事業主と同様の対応になる。
<2. 個人事業主の場合における例外ケース>
① 配偶者がサラリーマンの場合
・通常は、配偶者の年間が130万円未満の場合には、配偶者の扶養に入ることができる。
・この場合、退職後5日以内に配偶者の会社を通して手続を行う必要がある。
② 開業前、サラリーマンとして勤務していた場合
・退職する会社で加入していた健康保険を、最長2年間、任意で継続することも可能。
・この場合、資格喪失日から20日以内に申請行う必要がある。
・国民健康保険は所得に応じて保険料が変わるため、独立して収入が上がる場合には継続利用が有利になる場合があるものの、サラリーマン時代と異なり、会社が負担していた金額含めて保険料の全額を支払うことになる(会社が折半していた分が個人負担となってしまう)点に留意。
例えば、独立後、しばらくはコストを最小限に抑えたい方やサラリーマン時代と同様の保障を望まれている方、そんな方々には一考の余地ありです。
ありがとうございます。
次に、具体的な提出書類について教えて頂けないでしょうか?
はい。以下をご確認ください。
法人の場合、企業側にも社会保険の負担義務が生じる
ありがとうございます。会社勤めの際には、本来は個人が負担すべき社会保険の一部を企業が肩代わりして支払ってもらっていたということが分かりました。
そうですね。
以下に、社会保険の負担関係について少し説明しておきます。
<1. 法人のケース(健康保険/厚生年金)>
・健康保険料及び厚生年金保険料共に、標準報酬月額に応じて異なる。
・算出された税額を企業と従業員で折半する形で各々負担する。
<2. 個人事業主のケース(国民健康保険/国民年金)>
・国民健康保険料は、前年の所得に応じて異なる。
・国民年金は、全員一律で月に17,000円程度を負担する。
起業時の健康保険や年金の適用関係
開業時に手続が必要となる医療保険及び年金保険に係る届出書類を、「法人のケース」と「個人事業主のケース」とで整理すると、以下の通りとなります。
その他、登記簿謄本(法人のケース)や、本人確認書類などの添付資料が必要となりますので、所轄のホームページなどで確認しましょう。
<1. 法人のケース(健康保険・厚生年金)における提出書類>
a. 健康保険・厚生年金加入届出時
・健康保険・厚生年金保険新規適用届
b. 被保険者届出時
・健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(役員、従業員等被保険者となる人全員分)
c. 被扶養者届出時(※1)
・健康保険被扶養者(異動)届
<2. 個人事業主の場合(国民健康保険・国民年金)における提出書類>
a. 国民健康保険加入届出時
・国民健康保険適用開始届(※2)
・社会保険資格喪失証明書(加入者全員が記載されているもの)(※3)
b. 国民年金加入届出時(※4)
・国民年金被保険者関係届書(申出書)
(※1)役員や従業員に扶養家族がいる場合
(※2)「国民健康保険被保険者資格取得(適用開始)届書」や「国民健康保険加入届申請書」など自治体により名称が異なる
(※3)社判等が押印されているもの。国民健康保険に加入するのが退職者本人のみの場合は、退職証明書や離職票でも手続可能
(※4)健康保険加入時において配偶者が扶養に入っていた場合は配偶者も国民年金加入の手続が必要
「法人のケース」で必要な書類は、以下のリンク先より取得ください。
外部リンク先(健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 日本年金機構)
ありがとうございます。
提出書類の種類についてだいぶクリアになりました。
提出書類が、法人の場合と個人事業主の場合とで異なるということは、提出先や提出期限も両者で異なりますか?
提出先及び提出期限
はい、その通りです。
開業時に手続が必要となる医療保険及び年金保険に係る書類の提出先及び提出期限を「法人のケース」と「個人事業主のケース」とで整理すると以下の通りになります。
種類 | 場面 | 提出先 | 提出期限 |
---|---|---|---|
1. 法人 | 健康保険/厚生年金加入時 | 会社所在地を所轄する年金事務所 | 会社設立から5日以内 |
2. 個人事業主 | 国民健康保険/国民年金加入時 | 居住地の市区町村役場 | 原則として退職後の14日以内 |
メモメモ…
「開業時の社会保険関連手続」タスクの事前準備
「開業時の社会保険関連手続」タスクの事前準備には何が必要ですか?
「開業時の社会保険関連手続」タスクにおいては、特に事前準備はありません。
お近くの社会保険事務所などへ相談
社会保険関連の届出などをお願いできる専門家はいらっしゃいますか?
社会保険労務士が、当該分野の専門家として業務を提供しております。
・社会保険労務士
自分で起業時の社会保険関連届出を行う場合、freee会社設立などを活用
「開業時の社会保険関連手続」タスクを自製する場合には、
どのように実施すると効率良く作業ができますか?
起業手続と同時に社会保険関連手続きも必要となりますので、民間サービスでは、クラウド会計システムベンダー提供の会社設立支援ツールの活用が考えられます。
例えばfreee会社設立では、年金事務所へ準備する資料がダウンロードできる形となっております。
また、freeeもマネーフォワードも、別途、人事労務関連サービスも提供しておりますので、開業後のバックオフィス支援ツールとしても利用することができます。
なお、無料で使える公的サービスとしては、デジタル庁より、「法人設立ワンストップサービス」が提供されており、マイナンバーカードを活用し、社会保険関連手続も当サイト経由で行うことができます。
外部リンク先(会社設立支援ITツール)
(商品/サービス概要)
・累計会社設立数が3万社以上と最も利用されている、freeeが提供する会社設立サービス。
・「クラウド会計システムプベンダー提供の会社設立支援ツール」や「法人設立ワンストップサービス(デジタル庁)」などのサービスを活用することができる。
「開業時の社会保険関連手続」タスクの作業手順
さて、本題となりますが、自製を前提とした場合の、「開業時の社会保険関連手続」タスクの作業について教えてください。
「開業時の社会保険関連手続」タスクの作業手順概略は、以下の通りです。
作業手順概略
(1)開業にあたり各自適用される社会保険制度の整理
(1)利用サービスの選択
(2)必要書類の準備
(1)行政官庁の窓口又は電子申請にて申請の実施
作業手順説明
Step 1(適用される社会保険の整理)
まずは、ご自身が適用となる社会保険を整理しましょう。
一人会社であることを前提とすると、一般的な適用ケースは以下の通りです。
介護保険は、40歳以上で適用となりますが、医療保険加入者は、自動的に介護保険が適用となります。
種類 | 医療保険 | 年金保険 | 労働保険 | 介護保険 |
---|---|---|---|---|
1. 法人 | 健康保険 | 厚生年金(※1) | 適用なし | 40歳以上で加入 |
2. 個人事業主 | 国民健康保険 | 国民年金 | 適用なし | 40歳以上で加入 |
(※1)役員報酬を支払っているケース
シンプルでわかりやすいですね。
Step 2(必要書類の整理)
(1)利用サービスの選択
起業手続と同時に社会保険関連手続きも必要となりますので、民間サービスでは、クラウド会計システムベンダー提供の会社設立支援ツールの活用は便利です。年金事務所へ準備する資料がダウンロードできる形となっております。
また、デジタル庁より、「法人設立ワンストップサービス」が提供されており、マイナンバーカードを活用し、社会保険関連手続も当サイト経由で行うことができます。
外部リンク先(会社設立支援ITツール)
(商品/サービス概要)
・累計会社設立数が3万社以上と最も利用されている、freeeが提供する会社設立サービス。
(2)必要書類の準備
次に、申請にあたり必要となる書類を整理しましょう。
「健康保険/厚生年金」と「国民健康保険/国民年金」とで必要書類が異なる点に注意してください。
また、登記簿謄本(法人のケース)や、本人確認書類などの添付資料が必要となりますので、所轄のホームページなどで確認しましょう。
<法人のケース> 健康保険・厚生年金 | <個人事業主のケース> 国民健康保険 | <個人事業主のケース> 国民年金 |
---|---|---|
健康保険・厚生年金保険新規適用届 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届(※1) 健康保険被扶養者(異動)届(※2) | 国民健康保険適用開始届(※3) 社会保険資格喪失証明書(※4) | 国民年金被保険者関係届書(申出書) |
(※1)役員、従業員等被保険者となる人全員分
(※2)役員や従業員等被保険者に扶養家族がいる場合のみ
(※3)「国民健康保険被保険者資格取得(適用開始)届書」や「国民健康保険加入届申請書」など自治体により名称が異なる
(※4)加入者全員が記載され、社判等が押印されているもの。ただし退職者本人のみが加入する場合は、退職証明書や離職票でも手続可能
自治体のホームページなども参考に、資料を準備してみます。
Step 3(申請)
申請にあたり留意すべきことはありますか?
申請書同様、「健康保険/厚生年金」と「国民健康保険/国民年金」とで申請窓口が異なる点に留意ください。
・「健康保険/厚生年金」の窓口は年金事務所、「国民健康保険/国民年金」の窓口は市町村役場となる。
申請した後に実施すべきことはありますでしょうか?
申請後は、申請内容はしっかりと反映されているかを確認する必要があります。
特に健康保険は必要頻度が高いと思いますので、交付された保険証はしっかり保管しましょう。
通常、保険証は1~2週間程度で交付されます。
役所の混雑状況にも影響する関係で、「1ヶ月経っても送付されてこない」といったケースもあるようなので、必要に応じて所轄部署へ問い合わせを行いましょう。
おわりに
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